袋ナット(キャップナット)とは?JIS 3形と二体式溶接ナットの製造方法
 2026-08-24
技術記事

袋ナット(キャップナット)・二体式ホイールナット:構造、規格と自動抵抗溶接

2026年8月12日 · 袋ナット / 抵抗溶接 / 自動化設備

袋ナットとキャップナットの違いとは?JIS B 1183の1形・2形・3形、二体式溶接ナット、ホイールナットへの用途、自動抵抗溶接による製造方法を解説します。

袋ナット(キャップナット)とは?

袋ナットとは、ナットの上部が閉じられ、ボルトやねじの先端が外部に露出しない構造のナットです。日本では一般的に「袋ナット」または「六角袋ナット」と呼ばれていますが、メーカーや業界によっては「キャップナット」という名称も使用されています。

JISでは JIS B 1183「六角袋ナット」として規定されており、英語では Domed cap nuts と表記されています。用途やメーカーによって、次のような名称で検索されることもあります。

  • 袋ナット
  • 六角袋ナット
  • キャップナット
  • ドームナット
  • 溶接袋ナット
  • 二体式ナット
  • 二体式キャップナット
  • キャップ付きホイールナット
  • ステンレスキャップナット

外観は似ていても、ナット本体とキャップがどのように製造・接合されているかによって構造は異なります。

JIS B 1183の1形・2形・3形

JIS B 1183では、六角袋ナットを構造によって1形・2形・3形に分類しています。

 

1形:一体型・ねじ逃げ溝なし

1形は、六角部とキャップ部が一体成形された構造で、ねじの逃げ溝がありません。

構造概念

ナット本体 + キャップ部を一体成形 = 1形

ナット上部まで同一材料から成形されるため、別体のキャップを後から取り付ける工程はありません。

2形:一体型・ねじ逃げ溝あり

2形も六角部とキャップ部を一体で製造する構造ですが、ねじの逃げ溝があります。つまり、1形と2形はいずれも基本的に一体型袋ナットです。

3形:キャップを溶接する二体式構造

3形では、六角ナット本体とキャップ部を別々に製造し、溶接によって一体化します。

構造概念

ナット本体 + 別体キャップ + 溶接 = 3形袋ナット

日本のねじメーカーでも、3形袋ナットを「六角ナットの上部にキャップを溶接したナット」と説明しています。英語圏では、このような構造は two-piece cap nut、welded cap nut、two-piece nut などと表現されることがあります。

ただし、別体キャップを溶接した製品であっても、寸法や仕様がJIS B 1183に適合していなければ、必ずしも「JIS 3形」とは限りません。

 

一体型と二体式では何が違う?

一体型と二体式のどちらが優れているということではありません。製品構造は、自動車メーカー、ファスナーメーカー、最終ユーザーの仕様、コスト、外観、強度などによって選択されます。二体式構造には、製造面でいくつかの特徴があります。

 

材料使用量・重量を抑えやすい

キャップを板材から別途成形することで、一体型の閉鎖頭部よりも薄いキャップを使用できる場合があります。そのため、大量生産では材料使用量や製品重量の低減につながります。

 

通しタップ加工が可能

キャップを溶接する前のナット本体は開放されているため、通しタップ加工が可能です。一体型の閉鎖ナットで必要となる止まり穴加工と比較して、ねじ加工を効率化しやすい点も二体式構造の特徴です。

 

ナットとキャップを別々に設計できる

ナット本体は強度や締結性能を重視し、キャップは外観、耐食性、形状などを重視して設計できます。例えば、

  • ナット本体:炭素鋼
  • キャップ:ステンレス鋼

といった異材質の組み合わせも可能です。キャップの板厚、高さ、ドーム形状、材質、表面外観などをナット本体とは別に設計できることも、二体式の大きな特徴です。

 

フルカバータイプのホイールナット

自動車用ホイールナットには、JIS 3形袋ナットとは異なり、薄い金属カバーで六角部の大部分を覆う二体式構造もあります。特にステンレス製カバーは、装飾性や耐食性を目的として使用されます。

かしめ式フルカバー

薄いステンレスカバーを六角ナットの外側にかぶせ、下端部をかしめ・ロール成形して固定する方法です。ホイールとの座面やテーパー部を残しながら、六角部の外側をステンレスカバーで覆います。

溶接式フルカバー

同様のカバーを、設計されたフランジ部や接合部で溶接して固定する構造もあります。この場合もナット本体とカバーは別部品であるため、広い意味では二体式ホイールナットです。ただし、JIS 3形袋ナットのようにナット頭部へ小型のキャップやドームを溶接する構造とは、キャップ形状や接合位置が異なります。

 

袋ナット・二体式ナットの用途

袋ナットや二体式キャップナットは、自動車だけでなく幅広い用途で使用されています。代表的な用途には、次のようなものがあります。

  • 自動車用ホイールナット
  • 一般機械
  • 産業設備
  • 建築金物
  • 手すり・フェンス
  • 家具
  • 輸送機器
  • 装飾部品

袋ナットは、ボルトやねじの先端を覆うことで、安全性、外観、ねじ部の保護や防錆などを目的として使用されます。日本の袋ナットメーカーも、露出したボルト端部の保護、美観、雨水侵入やさびの抑制などを用途として説明しています。

 

JIS 3形袋ナットの自動抵抗溶接

JIS 3形や同様の二体式溶接袋ナットでは、ナット本体とキャップを別々に製造した後、溶接して完成品にします。大量生産では、この工程を自動化することができます。

自動化工程

ナット供給 → キャップ供給 → 整列 → 位置決め → 抵抗溶接 → 排出

このため、袋ナットの製造設備は単なる溶接機ではありません。小さなナットとキャップを連続的に供給し、正しい方向と位置に組み合わせ、安定した溶接を繰り返す専用自動化設備が必要になります。

このような設備は、ユーザーによってさまざまな名称で検索されています。

  • 袋ナット溶接機
  • キャップナット溶接機
  • JIS 3形 袋ナット 溶接機
  • 自動袋ナット溶接機
  • 二体式ナット溶接機
  • ホイールナット溶接機
  • ドームナット溶接機
  • プロジェクション溶接機
  • キャップナット用抵抗溶接機

名称は異なっていても、基本的な目的は同じです。別々に製造されたナットとキャップを自動供給し、位置決めして溶接し、一つの完成品にすることです。

大慶電機の自動袋ナット・キャップナット溶接機

Dahchingでは、長年にわたりさまざまな形状の袋ナット、キャップナット、二体式ホイールナット向け自動抵抗溶接設備を製作しています。

ナット・キャップの安定した自動供給

ナットとキャップは、それぞれボウルフィーダーによって自動供給します。キャップには、浅型、深型、中空形状、ドーム形状、サイズの異なるキャップなどさまざまな形状があり、形状によって供給・整列時の挙動も異なります。

Dahchingでは、これまでの袋ナット溶接設備の経験を基に、製品形状に合わせて供給・搬送システムを設計します。製品条件が許す場合には、複数サイズのナットやキャップに対応できる調整式システムとすることも可能です。


安定した完成寸法

キャップの位置は、完成品の寸法や外観に直接影響します。Dahchingでは、ナットとキャップの実際の形状に合わせて治具・位置決めシステムを設計し、連続生産でも安定したキャップ位置と完成寸法を確保します。

 

電流だけではなく、溶接状態を監視

袋ナット溶接では、溶接電流だけを確認するだけでは十分ではありません。設備仕様に応じて、次の項目を監視し、各ワークの溶接状態を確認できます。

  • 溶接電流
  • 溶接加圧力
  • 溶接変位・圧入量

安定した溶接は、接合強度だけではなく完成品の外観品質にもつながります。

 

ステンレスキャップの外観にも配慮

ステンレス製キャップは、溶接後に追加の表面処理を行わず、そのまま完成品の外観面として使用される場合があります。そのためDahchingでは、溶接品質だけでなく、溶接部の均一性、キャップ変形の低減、安定した溶接外観、熱による変色の最小化も考慮して溶接条件と治具を設計します。

 

約2.0~3.5秒/個の自動生産

ナットサイズ、キャップ形状、製品仕様によって異なりますが、Dahchingの自動袋ナット溶接設備では、一般的に 約2.0~3.5秒/個 の生産サイクルに対応します。高速生産では、生産速度と同時に工程の安定性が非常に重要です。わずかな異常でも短時間で多数の不良品につながる可能性があるためです。

 

インライン品質検証

お客様の品質要求に応じて、設備内にインライン品質検証機能を組み込むことも可能です。例えば、

  • プルーフテスト
  • 設定した頻度でのサンプリング検査
  • 破壊試験
  • 溶接パラメータ監視
  • 異常検出

指定されたワークを自動的に検査ステーションへ送り、生産途中で溶接品質を確認することで、異常を早い段階で発見することができます。

一体型自動化システム

供給 → 位置決め → 抵抗溶接 → モニタリング → 品質検証 → 排出

 

よくあるご質問

Q1. 袋ナットとキャップナットは同じですか?

日本では「袋ナット」または「六角袋ナット」が一般的な名称ですが、メーカーや用途によって「キャップナット」という名称も使用されています。JIS B 1183では「六角袋ナット」と規定されています。

Q2. JIS B 1183の3形袋ナットとは?

3形は、六角部とキャップ部を別々に製造し、溶接して一体化した袋ナットです。英語では、同様の構造を two-piece cap nut や welded cap nut と表現する場合があります。

Q3. 3形袋ナットはどのように製造されますか?

一般的には、ナット本体とキャップを別々に製造した後、両部品を位置決めして溶接します。大量生産では、供給・位置決め・抵抗溶接・排出までを自動化することができます。

Q4. ステンレスキャップをスチール製ナットに抵抗溶接できますか?

可能です。ただし、キャップ材質、板厚、ナット材質、接合形状などに応じて適切な溶接条件と治具設計が必要です。特に外観部品では、溶接強度と同時に変形や変色も重要になります。

Q5. 1台の袋ナット溶接機で複数サイズに対応できますか?

製品形状やサイズ範囲によっては、供給装置や治具を調整式に設計し、複数サイズのナット・キャップに対応することが可能です。形状差が大きい場合は、専用治具や異なる供給方式が必要になる場合があります。

 

二体式袋ナット、ホイールナット、キャップナットの自動抵抗溶接ラインをご検討中の場合は、大慶電機までお問い合わせください。ナットとキャップの形状、材質、生産条件に応じて、最適な自動溶接ソリューションをご提案します。